地下鉄を降り、地上に出ると結構な雨。
行き交う多くの人の間を縫うように歩いているといきなり肩を掴まれた。
驚いて振り返るとそこにはタクシーの運転手が。
険しい形相の彼は私の肩を掴んだまま、無言でタクシーに押し込もうとするではないか。
わけのわからぬまま無理矢理乗車させられ、急発進するタクシー。我に返り、抗議しようとした私に運転手が青ざめた顔で言った。
「無茶してすまなんだけど、誰もいない道で何かを避けるように歩いていたあんたを見て『助けなあかん!』と思たんや! あんた、危ないとこやったんや!」
…「大阪市営地下鉄千日前線」。昭和47年5月13日に117名が犠牲になった「千日デパート火災」の現場のすぐ近くであった。
同様の話は「ホテルニュージャパン」跡地や、東京大空襲で多くの犠牲者を出した墨田区界隈でも語られることがある。
ネットで見かけた話。
気づかずに大勢の幽霊に囲まれていたなんて怖すぎる。
けど一番恐怖を感じたのは、それを見つけたタクシーのおっちゃんだと思う。
死んでもそれに気づかない、または気づかないふりをして生きていたときと同じように日常を繰り返そうとする幽霊もいるんだとか。
街を行き交う大勢の人たちの中に、死者が自然に紛れ込んでいるかもしれないと思うと…。
自分の死を認められない:★★★★☆