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【事件事故】 三毛別羆事件7-最期
1出現 2襲撃 3再襲 4惨劇 5戦慄 6討伐 7最期


最期

12月13日。

獲物を奪還できなかったヒグマは、無人になった家屋を荒らして回った。
保存されていた食料を食い漁り、家財を屋外まで引っ張り出して散らかした。
とりわけ女が使っていた枕や、女が湯たんぽがわりにしていた石などに牙を折るほどかじりついたりと異様な執着を見せていた。
兵吉の話でも、かつて熊が飯場の女性を食い殺していたという。

  「熊は最初に食べたものを生涯食す」

討伐隊はこの言い伝えをひしひしと実感した。
素手で野生と相対するには人間はあまりにも弱く、身を守る術も逃げる術もない。
肉も柔らかく、ひと所に住み、獲るに容易い人間の味を覚えたヒグマにとって、それはご馳走でしかなかった。


この夜、三毛別川の対岸で黒い影が動くのを警戒中の討伐隊が発見。

「人か熊か!」

三度呼びかけて返事がなかったため、討伐隊は10丁の銃で一斉に撃ちかけた。
が、影は雪原へと消えた。
この時は夜も更けていたため追跡は断念することになった。


翌12月14日未明。

対岸の雪の上に巨大熊の足跡と血痕が見つかった。
その報告に十数人の鉄砲撃ちや討伐隊、犬などが熊の逃走経路を追った。
その先陣には兵吉の姿があった。

いち早く山頂に到達した兵吉が、前方200メートルのところに巨大ヒグマを発見。
やはり怪我で足が鈍っていたのだ。
兵吉は20メートルまで近寄り、木の影に身を隠した。
手負いの熊は木につかまって山すその討伐隊に気を取られていたため兵吉には気づいていない。

好機到来。

兵吉の銃弾はヒグマの心臓近くを撃ち抜いた。
討伐隊から歓声があがる。
が、熊はむっくりと立ち上がると、兵吉を睨んで猛然と雄叫びをあげた。
後衛の討伐隊が鉄砲を構える。

が、それより早く兵吉の二弾目がヒグマの頭を貫いた。
一発ずつの弾込め銃では信じられない早業。
兵吉は二発目の弾丸を指に挟んでいたのだ。


どう、と巨体が倒れた。
悪魔の最期だった。




ヒグマはオスで推定7~8歳。
重さ340キログラム、身長2.7メートルにも及ぶ巨体には、胸から背中にかけて「袈裟懸け」と呼ばれる白斑があった。
また、体に比べて頭部が異様に大きかった。

ヒグマの遺骸は三毛別の青年会館へ運ばれた。
雨竜郡から来たアイヌの夫婦はヒグマを見て、数日前に雨竜で女を食い殺したヤツだと言った。
その証拠に腹から赤い肌着の切れ端が出てくる、と。
あるマタギは、これが旭川で女を食い殺したヒグマなら肉色の脚絆が出てくると言った。
山本兵吉は、このヒグマが天塩で飯場の女を食い殺した奴に違いないと言った。

解剖され胃を開くと、
赤い布、
肉色の脚絆、
そして髪の毛が絡まった葡萄色の脚絆がそれぞれ出てきた。
葡萄色の脚絆はマユのものだった。


解剖が済むとヒグマの肉は供養のために煮て食べられた。
毛皮や肝は売られ、その金は犠牲者遺族に渡された。


ヒグマに馬乗りになられ、頭に大怪我を負いながらも子供を連れて逃げたヤヨは、順調に回復した。
ヤヨに背負われたまま噛み付かれた梅吉は、後遺症に苦しみ2年8ヶ月後に死亡した。
オドも回復したが、後に川に転落して死亡。ただしヒグマによる怪我が影響したかは不明。

事件は解決したが、村人の心には恐怖の傷跡が大きく残った。
村からはひとり、またひとりと人が離れていき、彼らが開拓した土地は、下流に住む辻家を除いて最終的には無人の地となったという。




その後、ヒグマが倒されたすぐ近くに架かる橋は「射止橋(うちどめばし)」と呼ばれるようになった。
その近くに住んで討伐隊に自宅を提供した農家の大川家には当時当時7歳の長男の春義がいた。
彼は犠牲者たちの無念を晴らすためその一人につき10頭のヒグマに復讐すると誓い、長い年月をかけて102頭のヒグマを射止め、引退してからは熊害慰霊碑を建立した。
その息子の高義も同じくハンターとなり、父も追っていた体重500キログラムという超巨大ヒグマ「北海太郎」を8年がかり仕留めている。


そして現在。
射止橋の先には、当時の情景が再現された「三毛別羆事件副現地」があり、そこに至る国道は「ベアロード」と名付けられた。
路傍には可愛らしい熊の絵の看板がそこかしこに立てられ、事件を知って訪れる者たちに複雑な感情を抱かせている。




大自然を切り開く開拓民を襲った惨劇。
生き証人による凄惨な目撃談はどんなつくり話よりも強烈です。
普段動物園で見て「可愛い」と思っている猛獣たちも、本来はこういう生き物。
自然に対する畏れを忘れないように、いつか自分が「獲物」にされてしまわないように、人間の唯一の武器である「知恵」で、危うきに近寄らず済みたいものです。

1出現 2襲撃 3再襲 4惨劇 5戦慄 6討伐 7最期

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by kero-tama | 2010-10-04 00:36
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