1出現 2襲撃 3再襲 4惨劇 5戦慄 6討伐 7最期
大正4年(1915年)12月。
北海道留萌苫前村三毛別六線沢(現・苫前町古丹別三渓)で日本史上最大最悪の熊害(ゆうがい)事件が発生。
「袈裟懸け」と呼ばれる巨大なヒグマが数度にわたって民家を襲い、当時の開拓民7名が死亡、3名の重傷者を出した。
事件は「三毛別羆事件(さんけべつひぐまじけん)」と称され、惨劇の様子は生存者や討伐隊によって克明に伝えられている。
出現
この年の11月初旬。
開拓村の池田家にヒグマが出現。
馬が驚いて暴れたため、トウモロコシに被害を与えただけで熊は逃亡したが、主人の富蔵はぬかるみに残った足跡の大きさに懸念を抱いた。
11月20日。
ヒグマは再び現れた。
家主は3人のマタギ(猟師)を雇い、待ち伏せることにした。
11月30日。
三度現れたヒグマに発砲するも、仕留めるには至らず逃亡される。
翌朝、血痕を確認。
池田家次男・亀次郎を加えた4人で追跡するが、地吹雪(※2)により断念した。
それから9日後、惨劇が起こる。
※2:強風によって積雪が舞い上がり視界が損なわれる状態。
ヒグマ
生態
ネコ目(食肉目)クマ科に属する雑食性の哺乳類。
日本最大の陸棲哺乳類で、日本では北海道にのみ生息。
オスの成獣で体長2.5~3.0メートル、体重250~500キログラム。
がっしりとした頑丈な体格を誇り、頭骨が大きく肩も盛り上がっている。
ヒグマは栄養状態によって生じる個体差が非常に顕著で、内陸のヒグマが300キログラムを超える事はあまり多くないが、サケ・マス類を豊富に捕食できる地域のヒグマは巨大になる。
地上最強の肉食獣と称されるシロクマとは近縁種(混血が可能)にあたる。
知性・習性
ヒグマは知力に優れ、最初に民家の飼い犬を襲い、その後住民を襲うこともあった。
また執着心が強く、何度も獲物の場所に戻る習性がある。
土葬された人間の遺体を掘り起こして味を覚えたヒグマは生きた人間を襲うようになるため、ヒグマの生息地域で土葬は厳禁とされる。
熊避けに鈴など音を鳴らして山に入るという風習があるが、人間の味を覚えた熊には餌の場所を知らせるようなもので逆効果になるという。
当然死んだふりも、木に登るのも意味がなく、また逃げるものを追う習性が強い。
熊は山道でも時速60キロメートルで走れるため、背中を向けて逃げ出すのは危険とされる。
また子熊を見かけたら近くに凶暴な母熊がいると考えなければならない。
熊に遭遇した時の対応は諸説あるが、熊の生息地域に近づかないのが1番なのは言うまでもない。
【事件事故】 三毛別羆事件(その2)「襲撃」 へつづく。
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