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【怖い話】猿の手
冷たい雨が降った夜、妻と息子の3人で暮らす老人のもとに一人の軍人が訪れた。
老人が現役だった頃彼はまだひよっこだったが、21年の歳月が彼をたくましい軍人へと変えていた。
遠方からの来客に、老人の妻と息子は興味津々の様子だ。
もてなされた酒が入ると、彼は自分が経験した戦争や災害、奇妙な民族や冒険譚を語って聞かせた。
その話に思いを馳せた老人が、ふと過去を思い出す。

「そういえば昔、わしに"猿の手"というものを話しかけたことがあったな」

すると男は血相を変え「あれは何でもありません」と話を切ろうとしたが、老人の妻がそれに興味を惹かれている様子を見て、渋々とポケットから何かを出した。干からびてミイラになった動物の肢のようだ。

その奇妙なミイラには3人別々の人間に、それぞれ3つの願いを叶えることができるまじないが掛けられている。
まじないを行ったのは歳経た行者で、人に与えられた宿命をねじ曲げようとすれば悲劇が起きる、という教訓のために作ったのだと彼は話した。

老人の息子に問われ、男はこれに願い事をし、そしてそれは叶ったと血の気の失せた顔で答えた。
次に老人の妻に問われ、これを最初に手にした者は、最初と2番目の願い事は判らないが3番目の願い事で自分の死を願った、と答えた。
その後この"猿の手"は自分が所有することになったという。
男の沈鬱な様子に家族は息を飲んだ。

「3つの願いを叶えたならそれはもう君には無用だろう。何故まだ持っている?」
老人が聞くと男は「わかりません」と答え、突然"猿の手"を暖炉の火に投じた。
しかし老人は男の制止も聞かずそれを拾いあげてしまった。
「どうかそれをそのまま燃やしてください」という男と、「君が要らないのなら私にこれをくれ」と言う老人。
重ねて「燃やしてください」と頼む男に、老人は首を横に振った。

「どうやって使うんだ?」

手放す様子のない老人に男は諦めたように「右手に高く掲げ、願い事を言うだけ。しかしその後どうなっても知りません。そして願うなら、どうか分別のある願い事をしてください」と警告した。

男が帰った後、老人は"猿の手"に何を願おうと悩んだ。欲しいものはもう大抵持っている。
すると息子が「家の残金が払えたら楽だから、200ポンドだけくださいと願ってみたら?」と提案。
息子の軽口に微笑むと、老人は"猿の手"を右手で高く掲げた。

「我に200ポンドを授け給え」

途端、老人は悲鳴をあげた。"猿の手"がねじれ動いたというのだ。
しかし駆け寄った妻と息子にきっと勘違いだと言われ、老人は渋々引っ込んだ。
「きっと寝室のベッドにお金が入ったバッグが置いてありますよ」と息子は明るく言った。

翌日、平凡で穏やかな朝を迎えると、息子は昨夜の不安を笑い飛ばした。
そして「大金が手に入っても僕が帰ってくるまで使わないでくださいね」と両親に軽口を言うと、いつものように仕事へと出かけていった。

その昼、身なりの良い男が神妙な様子で家を訪れた。
昨日のこともあって、妻は彼が200ポンドを持ってきたのではないかと期待したが、なかなか用件を言い出せない彼に、老夫婦は不安を覚えた。
男は意を決し、自分は彼らの息子が務める会社から派遣された者で、息子が会社の機械に巻き込まれて死んだことを告げた。
会社は責任を認めず賠償もしないが、勤勉だった彼らの息子に対しいくばくかの補償をしたいと男は申し出た。
老人は恐る恐るその金額を聞いた。


その額は、200ポンドだった。


家から2マイル(約3.2キロ)離れた墓地に息子は埋葬された。
悲しみを紛らわす何かが起こってくれないかと願い続けたが、やがて老夫婦は諦めとともに無気力になり、言葉を交わすこともなくなった。

10日が過ぎた夜、息子の死を悲しんでいた婦人は突然のひらめきに声をあげた。

「"猿の手"! "猿の手"があったわ!」

妻は"猿の手"で愛する息子を生き返らせてくださいと老人に迫った。何故もっと早く思いつかなかったのか、と。
老人が震える声で「それは愚かな願いだ」と訴えても、妻は聞かなかった。
老人は今にも引き裂かれた息子がここに現れる気がして恐怖していた。
しかし「あと2つ、願いが残っている」と泣きわめいて懇願する妻についに根負けして、彼は"猿の手"を高く掲げた。


「息子を生き返らせ給え」


妻は期待に瞳を輝かせて窓の外を見つめ続けたが、明かりに点けた蝋燭が燃え尽きる頃になっても何も起こらなかった。
老人は"猿の手"が効力を発揮しなかったことに安堵した。

ふたりがベッドに戻ってしばらくした頃、老人は蝋燭を取りに階下へ向かった。
ふと、聞こえるか聞こえないかの音で玄関のドアをノックする音が聞こえる。
老人が凍りつく。
ノックは続き、彼は慌てて寝室へ戻った。
妻が何事かと声をかけると、「ねずみだよ」と老人は震える声で答えた。
するとそのとき、大きなノックの音が家中に響き渡った。
「きっとあの子だわ!」と、妻はベッドを飛び起た。「忘れていたわ、あの子が2マイルも離れた場所にいたことを!」
老人はドアへ駆け寄ろうとする妻を強く引き止め、息子を家に入れないよう懇願したが、「あなたは息子を恐れるのですか」と泣き叫ぶ妻は頑として聞き入れない。
そうしている間にもドアを叩く音は続いた。
「行かなければ。ドアを開けてあげないと!」ついに妻は老人の手を振りほどいてドアへ向かった。
しかしかんぬきに手が届かない。
老人は慌てて"猿の手"を探した。
妻が椅子を引きずってくる音がする。
ノックはどんどん激しくなる。
かんぬきが軋み、はずれる音がする。
同時に老人は"猿の手"を見つけ出し、

そして、最後の願いを口にした。




激しく打ち鳴らされていたノックが、余韻を残して突然止んだ。
椅子を引きずってどかし、ドアが開かれる音がする。
冷たい風が、さっと階段を吹き抜けていった。

妻の慟哭が響く。
老人は外に出た。
ゆらめく街灯がひとけのない静かな通りを、ただ照らしていた。







W.W.ジェイコブズの短編小説「猿の手」を、細かいところを省いて掲載。
原文はこちら。
Classic Short Stories - The Monkey's Paw
翻訳機が宇宙語を吐き出すので、内容は意訳です。ご了承ください。

200ポンドは現在だと2~3万円の価値ですが、この物語が書かれた当時としては1年を豊かに暮らせるくらいの金額(現在の日本円にして数百万円くらい?)だったようです…が、確証ありません。ご存知の方、ぜひ教えてください。金額の価値によって印象も変わると思うので…。

様々な都市伝説や創作物の原型として今もなお語り継がれる「猿の手」。
妻と息子との暮らしはささやかですがしあわせなもので、老人に欲しいものなど特にありませんでした。
息子は"猿の手"の効力を信じていませんでしたが、父親の期待を無下にするのはかわいそうだと思ったのでしょう。
最後の老夫婦の葛藤が胸に刺さります。


悲しきは人の業:★★★★★

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by kero-tama | 2010-09-02 01:14
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